ワイヤーアクションは古い!?
From:関谷はやと
プライベートデスクにて。
車業界向けの日刊紙に目を通していたところ、
久しぶりに『おおっ!』と思わせる記事がありました。
それが、
『電動駐車ブレーキ(EPB)』です。
エレクトリック・パーキング・ブレーキと呼ばれるこのシステム、
ヨーロッパ車では、
すでに十数年前から採用されている技術です。
ちなみに国産車の中では、
トヨタのミニバン(といっても大きい)
『アルファード』『ベルファイア』、
ホンダの『N−BOX』や、
まもなく発売予定のニッサン『セレナワゴン』にも
装備されているとのことです。
しかし、EPBといっても、
僕が何のことを話しているのやら、
分かりにくいかも知れませんので、
ここでちょっと解説します。
パーキングブレーキって、
補助ブレーキの一種で、
車を停めておく場合に使うもので、
ギヤがニュートラルの状態でも、
タイヤが回転しないようにブレーキをかける装置です。
また、パーキングブレーキを作動させるためには、
運転席付近に設けられたレバーを引っ張ったり、
ペダルを踏んだりしますよね。
そして、このレバーやペダルの先には、
遠隔操作のための『ワイヤー』が引き込まれていて、
それで直接ブレーキを作動させています。
『ワイヤー』っていうのは、
金属製の細い線をより合わせたロープのような物です。
ワイヤー自体は作りがシンプルで、
さまざまなものに応用されていますが、
車のブレーキに関して言えば、
僕たちが遭遇する実際の故障事例として、
パーキングブレーキのワイヤーを、
何度も引っ張っているうちに伸びてしまい、
また伸びすぎて切れることもあります。
おまけに、レバーやペダル、ワイヤーを
複雑な取り回しで車内に配置して、
ブレーキまで引き込まないといけません。
それが室内スペースを設計する際の、
自由度を奪ってしまう、
という問題にもなっていました。
そこで登場したのが、
電動パーキングブレーキです。
こちらは、
ワイヤーの代わりに、
電気を送るための電線が引いてあります。
そしてブレーキに直接取り付けられたモーターで、
パーキングブレーキを作動させる仕組みです。
言葉にすると簡単ですよね・・
それなら、、
『じゃあ何で最初から電動にしないの?』
そんな疑問が沸いてくると思います。
しかし、
『電動駐車ブレーキ』実現のためには、
小型で強力な力を出すことができる、
『モーター』が必要だったんです。
しかも低コストで省電力という条件で・・
これが作れるようになったことで、
ようやく、
『電動パーキングブレーキ』が実現したんです。
ところで、
『パ−キングブレーキ』に先駆けて、
電動化された部位があります。
それが『アクセル』です。
運転席足元にはアクセルペダルがあります。
従来のアクセルは、
そのペダルからワイヤーを介して、
エンジンの出力をコントロールすることで、
スピードの調整をしていました。
それが『電子スロットル』という、
電動アクセルに変わっていきました。
こちらも同様に、
『何で電動化できなかったの?』という、
素朴な疑問が沸きますよね・・
ただアクセルの場合は、
ブレーキとは少し違う事情があって、
万が一故障などで、
アクセルのモーターに過大な電流が流れた時、
アクセルがフル加速するように作動するので、
車が暴走してしまう恐れがありました。
その問題を解決したのが、
電気の流れをより正確にコントロールする、
『電子制御技術』です。
この技術によって、
もし故障しても、車が暴走などせずに、
安全が保てるスピードまでしか出ないように、
細かい速度制御が可能にになりました。
また、車の燃費をより良くしたり、
有害な排気ガスの発生を抑えたりするための、
『アイドリング・ストップ』
が実現したのも電動アクセルのおかげです。
ところで、
こういった機械的な『ワイヤーアクション』から、
電動化に進む流れって、車だけじゃなく、
あなたも良く知っている、
『特撮映画』も同様です。
僕が子供の頃の特撮映画って、
飛行機やヒーロー、怪獣など、
空を飛ぶ役柄のものは、たいてい、
ワイヤーで吊るされていました。
それが電動化されて、、
『CG:コンピューター・グラフィック』と呼ばれ、
よりリアルな動きを見せてくれるようになりました。
このように、どの分野でも、
ワイヤーアクションのような機械的な動作から、
電動化への流れは留まることがありません。
当然僕たちメカニックに求められる要素も、
機械的な動作を学ぶことから、
電気・電子的な要素が必要とされています。
メカニックが手先を使った職人的な仕事から、
コンピューターやテスターを駆使した仕事へと、
大きく変わりつつあります。
関谷はやと
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