10センチ販売戦略 

From:関谷はやと

三栄自動車の事務所にて。

今から10年ほど前の話ですが、

僕が中古車の販売をしたときに、
とんでもない大失敗をやらかしたことがあります。

それが、どんな失敗かというと・・

あるお客様から、

『後部座席に人を乗せて、
高速道路を走りたいけど、

いま住んでいる場所周辺の道路が狭いため、
取り回しが楽な、小さい車の方がいい、

でも軽自動車だとサイズが小さ過ぎる・・』

とリクエストされたんですね。

そこで僕は、

三栄自動車に展示してあった、
今でいう『コンパクトカー』をお勧めしました。

ちなみに、
その時お勧めしたのが『初代日産キューブ』という、

ちょっと車高が高いタイプのコンパクトカーでした。

実際に車を見たお客様も、
『日産キューブ』を気に入ってくれて、

その後とんとん拍子で成約となり、

無事に納車を終えました。

ところが数日後、そのお客様から、

『あの車はダメです!』という電話が・・

『えっ何で!?あんなに喜んでくれてたのに・・』

そう思い、一体何がダメだったのか?
理由を尋ねてみると、

『だって、あの車は4人乗りなんです・・』

しまった!と気が付いたときには後の祭り、

そういえば・・たしかに、

一般的なコンパクトカーが5人乗りなのに対して、

初代の日産キューブの乗車定員って、
『4人乗り仕様』だったんですね・・

いや〜
僕としたことが、うっかりしていました・・

という訳で、その後すぐに、
日産キューブを買い戻させてもらい、

また別の中古車を探すことで、
取りあえずその時は収まりました・・

こんな風に、

乗車定員が車を購入するときの、
『絶対条件』になることもあれば、

このたびトヨタの世界戦略高級車である、
『レクサス』のSUV『RXシリーズ』では、

それまで、5人乗り2列シート仕様のみ、

だったものから、新たに、

『7人乗り3列シート仕様』が追加されました。

しかもそのためだけに、

全長を10センチ伸ばした、

新型ボディーまで開発しました・・

しかしですよ!

僕の勝手な思い込みですが、

『いや〜これで、

みんなで移動するにも1台で済むよね〜』って・・

このモデルで、それは無いやろ、と思います。

というのも、

SUVの3列目シートの居住性って、

そもそもスペースの制約があるため、

どう頑張っても、

車高の高いワゴン型の車には勝てません!

しかも、

さっき話したようにレクサスって、

日本国内だけで売ってる車じゃなく、

全世界で販売しているトヨタの最上級モデルです。

じゃあ何でトヨタは、わざわざそこに、

『7人乗り3列シート』を追加したんでしょうか?

ところで、

ほとんどのユーザーにしてみれば、

普段、車に乗るのは自分1人だけ・・

という人が多いはずです。

そこで、

初代日産キューブのように、

『別に1人減ったっていいじゃないか!?』

という車が登場しました。

しかし、そのせいで、

あと1人乗れなくて困る人もいれば、

レクサスのように、

使うことは無くても、
余計にもう2人乗ることができる車を、

あえて選ぶ人もいます。

今回のレクサスの場合、

本当に7人乗りが必要な人向けじゃなく、

例え実際に使うことが無くても

『3列目シート、プラス2人乗れる』という、

『余裕』をつけることで、より高級感を出し、

それを求める人に買ってもらおう、

という販売戦略なんじゃないかと・・

これも、僕の勝手な思い込みですが・・

こんな風に、車格が違えば、

乗車定員を使った販売戦略も、

まったく違ってくるんですね〜

これが自動車ビジネスの面白いところです。

関谷はやと

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