MT車の牙城が・・
From:関谷はやと
三栄自動車の事務所にて。
車を変速(ギヤチェンジ)するための装置に、
クラッチと呼ばれる部品があります。
日本語だと『動力伝達装置』と、
なんか物々しい呼び方になりますが、
分かりやすく説明すると、
エンジンからの動力をギヤ(MT)に伝達する装置、
だということです・・
そして、
運転免許を取得するためには、
この『クラッチ操作』に慣れ、しかも、
ある程度使いこなせるようになるまで、
発進時にギクシャクしたり、
エンストを繰り返したりと・・
僕たちが免許証を取得するときは、
そういった通過点がありました。
ただ現在は、
ほとんどの車が、MT車ではなく、
クラッチのないAT車となったので、
こういった経験をすることも少なくなりました。
しかも、免許取得の際に、
『AT車限定』も選べるようなったんで、
ますますMT車は影が薄くなりました。
ところが、そんな時代でも、
ことトラックやバスなど商用車に限っては、
MT車が健在です。
ちなみに、
三栄自動車に入庫してくるMT車は、
ほぼ100%が商用車です。
ただ、、ボンネット型バンや、
軽四トラック・バンなど、
使い道が乗用車に近い種類の車は、
もうほとんどがAT車です。
MT車となっているのは、
大きなトラックやダンプカー、
バス車両などです・・
いわば『MT車の牙城』という所でしょうか・・
ただ、それでも、
今売りだされている新しい大型トラックは、
AT車(正確にはAT車に近い構造)が、
主流となりつつあります。
これも技術向上のおかげで、
AT車の燃費が良くなったためです。
その結果、
トラックドライバーさんへの負担も軽減されました。
ところが、
そのような状況でも、
『MT車の牙城』の
崩れていなかった車種があったんです!
それが『観光バス』に使われている、
高級バスと呼ばれる車種です。
このメルマガを読んだあなたは
何で『観光バス』はMT車じゃないとダメなのか?
不思議に思ったはずです・・
これは、
観光バスにはどうしても必要な、
『ある条件』があるからなんです・・
その『ある条件』とは!?
『発進時にギクシャクしないこと』というより、
もっとレベルの高い、
『超滑らかに発進させること』が必要だったからです。
ちなみに大型の観光バスって、
乗車定員が平均すると40名そこそこです。
車を作る時に国で定められている、
人ひとりあたりの体重は55kgです。
これを掛け合わせると、
40名×55kg=2200kgとなります。
ただ、常時この重量な訳じゃなく、
数名しか乗車しない時もあれば、
満員の時だってあります・・
これを従来のAT車で運転すると、
どうしても『乗り心地』を犠牲にしてしまいます。
路線バスならいざ知らず、
『観光のため快適に乗客を運ぶ』というのが、
観光バスに与えられた使命(ミッション)です。
使命(ミッション)があるから、
観光バスはミッション(MT)車なのか・・
誰ですか!?
そんな、しょうもないことを言ってるのは(笑)
それまでの大型バス用のATって、
この重量差をコントロールできるほど、
緻密な制御ができなかったんですね〜
そのくらい、
観光バスの運転手さんって、
上手なクラッチコントロールをやってたんです。
それが、ドライバーの高齢化に加えて、
なり手自体も減少してきました・・
観光バスの競争相手って、
同業者同士じゃなく、ズバリ鉄道業者です。
負けるわけにはいきません・・
そういった背景から、このたび、
三菱の大型車部門から、
(現在はドイツのダイムラーグループの一員です)
観光バス用の『オートマチック』が開発され、
ついに実車が稼働する運びとなりました。
これで、ドライバーの運転技術が、
『職人技レベル』にまでならなくても、
観光バスを運転することが可能となります。
つまり、ある意味『職人は不要になった』
ということじゃないでしょうか・・
だからといって、
『運転技術が未熟なんじゃないの?』
そんな心配は無用です。
観光バスを運転するためには、
『大型自動車免許』に加え、
実技試験の合格点に、より高得点を必要とされる、
『2種免許』も取得しなくてはいけません。
いずれにしても、
『MT車の牙城』を崩すほどの
技術開発が進んだおかげで、
従来よりも短期間の経験で、
同じレベルの仕事に就けるというのは、
観光バス業界にとっても、
歓迎すべきことだと思います。
関谷はやと
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実にどうでもいいことですが、トランスミッションは
trans + mission ではなく
transmit + -ion です
動力伝達装置、ですからね
transmit(〜を伝達する)に由来します
名古屋方言でMT車をミッション車と呼びますが、そもそもミッションと略すのがおかしなこともありますし、AT車にも当然トランスミッションはあります
トランスミッションが無いのは、EVやFCVなどに限られます
(しかもEVでも減速機構はありますし、モーターに小細工して高速用と低速用であたかも変速しているようになっている機構のものも存在します)
実にややこしいですね!