シグナル　

From：関谷はやと

三栄自動車の事務所にて。

日本の大手自動車部品メーカーの、

『タカタ』が倒産しました。

タカタという会社は、

車に使われていれる
『シートベルト』や、『エアバッグ』のほか、

アフターマーケット商品である、
『チャイルドシート』も作っている会社です。

ちなみに、

僕には娘が３人いるんですが、

彼女たちが幼かった頃に

使っていたチャイルドシートは、

たしか『タカタ製』だったかと・・

ところで、

何でタカタが倒産の危機に陥ったのかというと、

事の発端は、

アメリカで起こった、ある事故が原因です。

その事故とは、

エアバッグ製造時に要因があったと思われる、

異物混入によって、

エアバッグが作動(展開)した際に、

本来、命を助けるためのはずのエアバッグで、

異物が散弾のように飛散し、

乗員が亡くなるという事故が数件起きたんです。

この事態を重く見たアメリカ連邦運輸局が、

タカタに対して原因調査と対策、

それに『リコール』と称した補償修理を命じました。

製造者責任という観点で見れば、

これは当然の対応です。

当初は、

アメリカでの主要納品先である、

『ホンダ』が支援するのか・・

とも言われていましたが、

このリコール問題は、

次から次へと新たな対象車の発生により、

タカタは、

補償・賠償にかかる費用を負担できなくなり、

加えて材料仕入れの代金決済ができず、

推定で１兆５０００億円もの負債を抱え、

このほどついに、

民事再生法を申請しました。

ちなみに、

エアバッグといえば『タカタ』というくらい、

世界でも圧倒的なシェアを持っていました。

なのに・・問題が表面化してから、

わずか２年ほどの間に、

このような結果となってしまいました・・

ただ、

いま冷静になって振り返ってみると、

『あれっ！？』というような点が、

実はいくつかあったんですね・・

ここからは、いつもの

僕なりの推察ですが、

初めにエアバッグの事故があってから、

タカタは、

さまざまな原因究明や対策を行っていましたが、

当初からアメリカ運輸局側とのコミュニケーションが、

うまく取れてない感じがしていました。

というのも、

タカタ製のエアバッグを搭載した車って、

アメリカの自動車メーカーだけじゃなく、

日本はもとより、
ヨーロッパ製の車にも搭載されていました。

通常なら、
こういった場合、部品メーカーは、

どの自動車メーカーに対しても、

粛々と対応していくことなります。

しかし、今回の場合は、

あるメーカーへの対応に、
一定のメドがついたかと思ったら、

また振出しに戻るような感じで、

別の自動車メーカーを表に立てて、

同じ騒ぎを蒸し返すといった具合でした。

そんなことをされたら、

一刻を争う事態のはずが、

騒ぎが落ち着くまで冷静な話ができませんので、

いたずらに時間と費用ばかりが過ぎてしまいます・・

そしてとうとう、、

タカタは今回のような結果となり、

幕引きとして、

中国資本のアメリカ部品製造会社、

ＫＳＳ（キー・セーフティー・システムズ）

という会社に事業を売却する形となりました・・

ところで、

ＫＳＳによる買収価格は、

わずか１７５０億円という大バーゲン価格です。

日本のエアバッグ・メーカーが、

こういった形で、

海外企業に売り飛ばされてしまったんです・・

こうなってしまうと、

それまでタカタで働いていた人たちは、

職を失うことになるんです・・

なのに、その間の日本政府の対応は、

アメリカ運輸局に対して、
何らかの手立てを打ったはずなんでしょうけど、

全く報道に出なかったんで、

僕たちにとってみれば、

アメリカや海外企業に

『いいように持っていかれた』としか映りません・・

せめて、

『１７５０億円では安すぎる！』とか、

『今後も補償をしないといけないので、
せめて○○円で！』という風に、

強気で交渉した場面を、

アピールしてもらいたかったですね・・

国際間ビジネスにおける交渉って、

単なる『取り引き』の枠を越えて、

もう『経済戦争』といわれるくらい、

駆け引きで勝敗が決まる世界です・・

タカタは何度も、

『誰か助けて！』というシグナルを、

送っていたはずなのに・・

何とも残念で情けない幕引きだと思いました・・

関谷はやと

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