思い込みのせいで、 

From:関谷はやと

三栄自動車の事務所にて。

趣味で車に乗っている人って、いますよね。

また仕事で車を使う人、

さらに日常生活の用事や通勤通学のために乗る人、、

なんか自動車保険のセールスみたいですね。

ところで
車の使い道って、人それぞれですけど、

どんな車でも共通していることが、
ガソリンやディーゼル燃料、電気自動車なら充電といった、

『燃料の補給』が挙げられます。

当たり前のことですけど、、
車で走っていると燃料は目減りします・・

そしてある程度減ってきたら、また補給するという、
その繰り返しですよね。

燃料がなければ車は走ることが出来ないので、

当然と言えば当然です。

しかし、、

燃料は十分入っているのに、
車が走らなくなることって・・実はあるんですよ!

知っていましたか?

これは僕が、

今から30年ほど前に、
バイクに乗っていた時の話です。

ただ毎日乗っていた訳じゃなく、

バイクに乗るのは、2〜3ヶ月に一度、
趣味でツーリングに行く程度なものでした。

その日も、天気も良かったんで、
朝からバイクを磨いて出発の準備をし、

それが出来上がったら、

エンジン・キーをひねり、
バイクに跨り、キックスタートをします。

ここで、ちょっと解説です・・
僕が乗っていたバイクもそうですが、

当時のバイクには、
セルモーターがついていないバイクが、

結構走っていたんですね〜

エンジンも掛かり、いざ出発です。

これといった当てもなく走るのも、
たまにはいいもんです・・

走り始めて10分位経った時でしょうか、

突然『ウ〜ン・・』という音とともに、
エンジンが力を失ってしまいました。

エンストです・・焦りました・・

その当時の僕は、
ただバイクに乗ってただけ、、です。

当然メンテナンスの知識もなく、

何でエンストしてしまったのか!?

その理由がまったく分からず、

ただバイクの前でオロオロするばかりです・・

「ガソリンも入ってるのに・・」

燃料タンクのふたを開けてみても、
しっかりとガソリンは入っています。

しかも満タン近く・・です。

エンジンを掛けようと、
何度かキックスタートをやってみますが、、

『プスプス・・』というだけです・・

ちなみにエンストした場所は、

閑散とした道路で、所々に家が建っている程度です。

なので、バイクを診てくれるお店もありません・・

こうなると、
人間あきらめが肝心です、というか、

開き直った僕は、

その時住んでいた『社員寮』まで、
バイクを押して帰ることにしました。

その距離2〜3キロはあったかと思います・・

今のような『ロードサービス』も、
僕が住んでいた愛知県の田舎町までは普及してなくて、

仮にあったとしても、
来てくれる頃には日が暮れてしまいます・・

意を決して、バイク行軍の開始です。

なんか白バイ隊の訓練のようになってきました(笑)

延々と続く上り坂をバイク押していると、
しんどくて泣きそうになります・・

翌日、土踏まずの辺りの筋が痛くて、
歩けなくなりましたよ・・

そうやって、
しばらくバイクを押していると、

古びた建物の軒先に、
これまた古い自転車や原付バイクを並べている、

自転車屋さんのような感じのお店が、

僕の目に飛び込んできました!

でも、、

果たして自転車屋さんで、
僕のバイクなんて、診てもらえるんでしょうか?

すると「おおっ、あるやん!!」

不思議なもので、

人間こんな時って、
自分の都合のいいものしか見えなくなるもんです・・

この時も、
自転車や、原付バイクのほかに、

ちょっと大きめの、
僕が乗っていた250ccと同じくらいのバイクが、

隅っこの方に1台だけ置いてあるのが見えたんです・・

僕は、ワラにもすがる思いで、

なりふり構わずお店の引き戸を開け、

そこでメガネをかけて作業をしていた、

店主さんらしき、
30代位の男性に向かって、

息を切らしながら訴えました。

「エンジンが掛からんなったんですけど・・」

お店に入るなり、
いきなりこの調子です・・

そのお店にいたお客さん(?)らしき人も、

お店の様子も気にせず、
ただ自分の大変さだけを訴えている僕に向かって、

「なんやコイツはっ!?、誰だ?」

みたいな表情で、あっけに取られていました。

しかし、
そこの店主さん、

一瞬驚いた様子でしたが、
メガネの奥から覗く、優しそうな目で、

「どうしたの?」と答えてくれました。

僕は、これまでの経緯を話し、
エンジンが掛からなくなったバイクを指さし、

「ガソリンは入っているんですけど・・」

というと、
店主さんは、燃料タンクのふたを開け、
覗き込んだあと、何やらにおいを嗅ぎ出しました。

「ちょっと診てみましょう・・」

そう言うと、
燃料タンクの下についている部品を、

手にしたドライバーでつつきながら、、

「どれくらい乗ってないの?」と、

僕にそう問いかけてきました。

後で知ったんですが、

これがキャブレータといって、
ガソリンをエンジンに送り込む役目をしている、
大切な部品だったんです。

診断!?が終わったらしく、店主さんは、

「じゃあ、ちょっと離れてて」

そう僕に言うと、
バイクに跨り、例のキックスタートを始めました。

『離れてて、って言っても・・』
四畳半ほどの作業スペースです。

僕は一歩退くのが精いっぱいでしたが、

店主さんは気にせず、
何度かキックスターをしていると、

『ブッ、ブブッ、ブ〜ン!』

見事エンジンが掛かりました。

「ガソリンが腐ってただけだよ!」

店主さんは僕に言いましたが、
僕には何のことやら・・です。

『えっ、ガソリンって腐るの!?』

僕だって、子供の頃から、
車を整備している現場を目にしています。

ガソリンが燃えやすく危険なことくらい、

もちろん知っていましたし、、
そう思い込んでいました。

しかし、

それはあくまでも、
『新鮮なガソリンに限る』ことだったんです。

でも、今は分かりますよ・・

ガソリンというのは、
空気中に長時間放置されていると劣化します。

専門的に言うと、
ガソリン内の揮発成分が空気中に放出されることで、

ガソリンが『燃焼しにくくなる』んですね。

店主さんは、
そのことをよく理解していて、

僕のバイクの燃料タンク内に残っていた、

比較的劣化が進んでいないガソリンと、
入れ換えることによって、

なんとかエンジンを掛けることが出来たんです。

そして僕は、この頃から、

自動車整備についての、
『経験や知識』『勉強』がいかに大切か、

そういったことに興味を持ち始めたんです。

関谷はやと

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